岡山地方裁判所 平成8年(行ウ)13号 判決 2000年8月30日
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告aは、加茂町に対し、七万二六〇〇円を支払え。
2 被告bは、加茂町に対し、三三万七五九一円を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 1、2項につき仮執行宣言
二 被告ら
主文同旨
第二事案の概要
一 本件は、加茂町が、加茂町財務会計規則(以下「町財務規則」という。)に違反して、町財務規則上要求されている起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取をすることなく、不当に高額な価格で物品の購入又は請負工事契約等をし、当時加茂町長又は加茂町教育長職務代理であった被告らは、右財務規則違反を認識しつつ右物品の購入又は請負工事契約等の代金の支出の決裁をしたため、加茂町は現に支払った代金額と妥当な代金額との差額分相当額の損害を被ったとして、加茂町の住民である原告らが、被告らに対し、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、加茂町に代位して右損害の加茂町への賠償を求めた事案である。
二 争いのない事実
1 原告らはいずれも加茂町の住民である。
2 被告aは、平成七年七月一〇日から加茂町長であり、被告bは、平成七年四月一日から同年八月三一日まで加茂町教育長職務代理の職にあった者である。
3 原告らは、平成八年四月二六日、加茂町監査委員に対し、加茂町職員措置請求に関する監査請求を行い、加茂町監査委員は、同年七月二日、右監査請求につき、①町財務規則について、全職員に内容徹底を早急に図ること、②事務処理について、町財務規則違反がないか総点検を行うこと、③規則違反した職員に厳重注意を行うこと、④収入役は支出負担行為の確認を厳重に行うことを内容とする勧告を行ったが、加茂町が損害を被った事実はないとして、損害を填補するための措置はとらなかった。
4 加茂町は、平成七年、別紙一の「発議年月日」欄記載の各年月日に、同「購入品」欄記載の物品購入代金、請負代金又は賃借料の各支払の目的で同「金額」欄記載の各金額を支出し(以下、それぞれの項目ごとの支出を併せて「本件各支出」という。)、本件各支出に際しての起案書、見積書及び契約書の有無はそれぞれ同「起案書の有無」「見積書の有無」「契約書の有無」欄各記載のとおりであった(ただし、見積書等の有無については別紙一「起案書の有無」「見積書の有無」「契約書の有無」欄各記載のとおり一部争いがある。)。
三 争点
1 本件各支出は法令及び町財務規則に違反して支出されたものか。
(一) 原告の主張
地方公共団体の資金の源泉が住民の租税負担であることから、地方公共団体は、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならず(地方自治法二条一四項〔改正前の一三項〕)、地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要かつ最小の限度を超えて支出してはならないところ(地方財政法四条一項)、本件各支出は右各法令の規定に違反するものである。
加茂町においては、予定価格が一〇万円を超える物品の購入又は修繕をするときは起案書を作成して町長の決裁(ただし、一件の金額が一〇万円を超え五〇万円以下の契約等の場合は助役〔教育長〕の専決事項であり、一〇万円以下の契約等の場合は担当課長の専決事項である〔加茂町事務決裁規程(以下「町事務決裁規程」という。)四条、別表第2、2(8)(9)、3(9)(10)〕。)を受けなければならず(町財務規則一六三条)、随意契約による場合で一件一万円を超える物品の購入をするとき及び一件一〇万円を超える工事、製造、その他の請負契約を締結する場合は、原則として二人以上の者から見積書を徴さなければならず(町財務規則一〇九条)、町長は契約の相手方を決定したときは契約書を作成しなければならず、契約書の作成を省略した場合は必要事項を記載した請書を契約の相手方から徴さなければならないところ(町財務規則一一一条)、本件各支出は、別紙一「起案書の有無」「見積書の有無」「契約書の有無」欄各記載のとおり(争いのある部分については原告の主張として記載されているとおり)、そのほとんどが起案書、見積書、契約書を作成しておらず、町財務規則の規定する手続に違反するものである。
(二) 被告の主張
本件各支出はすべて町政運営のために必要なものに対して支出されたものであり、その価格も正当であって、原告主張のような地方自治法等の法令違反はない。
また、図書書籍(別紙一記載の番号5―1、5―2)については見積書を省略することができるし、表示看板(同1―1)、ノーマット外(同1―2)、ペーパーマット(同2―2)、遊具塗装(同3―3)、台車溶接外(同3―4)、図書書籍(同5―1、5―2)、バドミントン支柱(同5―3)、ギター購入(同5―4)及び油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)については契約書を省略することができる。駐輪場看板設置(同5―6)については起案書があり、校舎体育館補強(同3―2)、駐輪場看板設置(同5―6)、油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)、バス借上(同7―1)については見積書があり、不燃物処理施設修理(同3―6)、エアコン(同5―5)、駐輪場看板設置(同5―6)については契約書がある。したがって、町財務規則の規定する手続の違反もない。
2 1の違反により、加茂町に損害が生じたか。
(一) 原告の主張
被告らが、本件各支出につき、町財務規則の規定する手続を履践していれば、加茂町はより低い価格で契約することができたにもかかわらず、被告らがこれを怠ったため、加茂町は不当に高い価格で契約することとなったのであり、右価格の差額が加茂町の被った損害となる。
具体的には、請負契約の場合は入札により通常の代金額の八〇パーセント、物品の購入の場合は定価の六六パーセントで契約することが可能であり、遊具塗装(別紙一の番号3―3)は同様の工事請負契約を締結したときと同じ工事比率に基づいて請負代金を決することができ、図書書籍の購入(別紙一の番号5―1、5―2)については定価の九七パーセントで購入できるのが通常であり、バス借上料(加茂町からドイツの森)は他の同様の距離(加茂町からたけべの森)についてバスを使用する際の借上料金が妥当な金額といえるので、加茂町が実際に支払った本件各支出と右の計算により支払うべき正当な価格との差額が加茂町の損害額となる。
本件各支出における各項日ごとの具体的な損害額は、別紙二記載の「購入品」欄各記載の項目に対応する同「損害額」欄各記載の金額のとおりである。
(二) 被告の主張
原告らの主張は争う。原告らは、本件各支出につき、六六パーセント、八〇パーセント、九七パーセントなどが正当な価格である旨主張するが、その主張に合理的な根拠はない。本件各支出はすべて正当なものであり、加茂町に損害はない。
3 被告らは、右損害につき責任を負うか。
(一) 原告の主張
被告らは、町財務規則の前記規定を認識しつつ、これを無視し、要求されている手続を踏むことなく契約を締結するなどして、故意又は過失によりそれぞれ別紙二「専決」欄の記載に対応する同「購入品」欄記載の項目につき決裁をすることにより本件各支出に関与したので、不法行為に基づき、別紙二「専決」欄の各記載のうち、「町長」との記載については被告aが、「教育長」との記載については被告bが、それぞれ同各記載に対応する同「損害額」欄各記載の加茂町の各損害を賠償する責任を負う。右の各被告が責任を負う損害額の合計は、被告aが七万二六〇〇円、被告bが三三万七五九一円である。
バス借上(別紙二記載の番号7―1)については、町事務決裁規程四条、別表第2、3(9)によれば担当課長の専決事項であるが、本来教育長の権限に属する事項であって、教育長は専決の権限のある職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務を有し、当時教育長職務代理であった被告bは、同義務に違反してバス借上のための支出を阻止しなかったのであるから、被告bは、バス借上にかかる損害を賠償する責任を負う。
被告の主張
原告らの主張は争う。
バス借上については、課長の専決事項であるから、仮に違法な支出であり加茂町に損害があったとしても被告bが責任を負うことはない。
第三争点に対する判断
一 前記第二、二の争いのない事実、証拠(甲一ないし五、乙一、三、一〇、一一、一三、一五、一六、二〇ないし二三、二七、二九、三二、三四、四〇、四八〔いずれも枝番を含む。〕、原告c、同d、被告b)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
1 別紙一記載番号1―1について
加茂町は、起案書及び見積書を徴することなく、口頭でおおまかな金額等について打ち合わせをした後に、岡山県苫田郡加茂町(以下「加茂町」という。)で看板製作等の営業をしている美創ことe(以下「美創」という。)に対し、玄関前駐車禁止両面表示看板(一枚あたり一万六〇〇〇円)を二枚、出入口駐車禁止立看板片面表示(一枚あたり一万三〇〇〇円)を二枚、プール入口立看板片面表示(一枚あたり二万五〇〇〇円)及び小学校庭前広場駐車禁止看板(一枚あたり一万八〇〇〇円)を各一枚ずつ発注し、平成七年六月二七日、美創は、右看板代金として合計一〇万四〇三〇円(三パーセントの割合による消費税相当額三〇三〇円を含む。)を請求し、加茂町は、同日、右代金について小学校の消耗品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年七月四日、右請求にかかる代金の支出の決議をし、美創は、同月二一日、加茂町から右代金を領収した。
美創のような看板を取り扱う業者は、加茂町の近隣の町村には数者あるが、加茂町内には美創しかなかった。加茂町は、簡易な看板を発注する場合は、相見積をとることなく美創に発注することが多かったが、入札を行った場合でも、美創が落札することが多かった。
2 別紙一記載番号1―2について
加茂町は、見積書及び起案書を徴することなく、岡山県津山市(以下「津山市」という。)の有限会社アリモトスポーツ(以下「アリモトスポーツ」という。)に対し、ノーマットアンバック(商品番号HB二〇二、一枚あたり八万円)を値引き交渉の結果、妥当な金額として一枚あたり六万六〇〇〇円で三枚発注し、アリモトスポーツは、平成七年六月一五日、右マット購入代金として一九万八〇〇〇円を加茂町に対して請求し、加茂町は、同日、右代金について小学校のプールの消耗品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月二一日、右請求にかかる代金の支出を決議し、同月二二日、アリモトスポーツに対し、右代金を支払った。
3 別紙一記載番号2―2について
加茂町は、津山市の山口商店ことf(以下「山口商店」という。)に対し、デュプロ株式会社が発売元であるデュープリンター三三〇〇の消耗品であるロールマスター(商品コードDR―六七〇、二本入り、定価一万三〇〇〇円)五箱及び同じくデュープリンター三三〇〇の消耗品であるインク黒(商品コード#五〇四、六〇〇CC入り、定価一八〇〇円)二四個をそれぞれ定価で発注し、山口商店は、平成七年五月一九日、加茂町に対し、右インク等購入代金として一一万一四四六円(三パーセントの割合による消費税相当額三二四六円を含む。)を請求し、加茂町は、同日、右代金について中学校の消耗品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月二九日、右請求にかかる代金の支出を決議し、山口商店は、同年六月二日、加茂町から右代金を領収した。
加茂町が山口商店から右インク等を定価で購入したのは、以前加茂町が入札の結果デュープリンター三三〇〇を購入した際の売主である山口商店から、右加茂町の購入したインク等はメーカーの純正の消耗品であり、デュープリンター三三〇〇自体が学校、役所等以外の民間企業等ではあまり使用されていないことから、メーカーが値引きをしないと告げられたからであった。
4 別紙一記載番号3―2について
加茂町は、入札の手続を実施することなく随意契約の方法により、津山市の株式会社松本建設(以下「松本建設」という。)に対し、中学校の校舎及び体育館補強工事(体育館屋外の手すり、温水シャワーの一部、校舎のガラスブロックなどの修理)を請負代金二三万六九〇〇円(工事費一式二〇万円、諸経費三万円、三パーセントの割合による消費税相当額六九〇〇円)で発注し、松本建設は、平成七年五月九日、右発注にかかる工事に着工し、右工事を同月二五日に完成させ、同日、加茂町に対し、右工事請負代金を請求し、加茂町は、同日、右請負代金について、中学校の修繕料として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年六月一日、右請求にかかる代金の支出を決議し、同月五日、松本建設に対し、右代金を支払った。
右工事において、施工前、施工状況、施工後の写真等は、加茂町に提出されていなかった。加茂町教育委員会の担当者が現場を確認したが、検査復命書は支払関係の書類に添付されていなかった。
加茂町が右工事の発注に際し入札の手続によらなかったのは、設計士に設計書の作成を依頼するとその分の費用がかかるため、修繕の場合は、加茂町においては、修繕を依頼する業者に対し、直接、修繕箇所を示して見積をさせて費用の節減を図るようにしていたからであり、加茂町が松本建設に依頼したのは、右工事の少し前に、松本建設は中学校の体育館の大規模改善工事を請け負っていたからであった。
5 別紙一記載番号3―3について
加茂町は、加茂町の中塚塗装ことg(以下「中塚塗装」という。)に対し、中学校遊具修繕塗装工事を請負代金一五万円で発注し、中塚塗装は、平成七年七月二四日、右発注にかかる工事に着工し、右工事を同月三一日に完成させ、同日、加茂町に対し、右工事請負代金を請求し、加茂町は、同日、右請負代金について、中学校の修繕料として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年八月四日、右請求にかかる代金の支出を決議し、中塚塗装は、同月一〇日、加茂町から右代金を領収した。
右工事の具体的な塗装箇所の指示などは現場で口頭で行われ、その際に各塗装に対する具体的金額明細についても口頭で確認し、後に中塚塗装が加茂町に対し、右工事代金を請求し、その後に、加茂町契約管理室の技師である職員が、支出議決書添付の工事費内訳書(乙一六の三)を作成し、これに、工事費を二〇万二九一〇円(足場工三万八〇〇〇円、塗装工合成ペイント三回塗り九万一〇〇〇円、地ごしらえ一万二〇〇〇円、諸経費五万六〇〇〇円、三パーセントの割合による消費税相当額五九一〇円。)として記載した。
同じころ、加茂町は、中塚塗装に対し、小学校遊具修繕塗装工事を工事費見積三二万九六〇〇円(足場工六万円、塗装工合成ペイント三回塗り一五万一〇〇〇円、地ごしらえ二万円、諸経費八万九〇〇〇円、三パーセントの割合による消費税相当額九六〇〇円。)に対して請負代金一八万円で発注し、中塚塗装は、平成七年七月一八日、右発注にかかる工事に着工し、右工事を同月三一日に完成させ、同日、加茂町に対し、右工事請負代金を請求し、加茂町は、同日、右請負代金について、中学校の修繕料として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年八月四日、右請求にかかる代金の支出を決議し、中塚塗装は、同月一〇日、加茂町から右代金を領収した。
工事比率とは、見積による消費税も含めた合計代金額に対する実際の請負代金額の割合のことをいい、通常は、一〇〇パーセントを上限、六六パーセントを下限とし、請負工事において入札をする場合は工事比率が基準とされ、右限度の範囲内でより低い工事比率を提示した請負業者が落札することとなっている。
修繕建築における工事見積書においては、使用する具体的な材料及び素材等の明細を示したうえで、一円単位の細かい計算により見積を行い、見積書には写真及び資料を添付して具体的補修箇所、補修方法等を明らかにするのが一般的である。
6 別紙一記載番号3―4について
加茂町は、起案書及び見積書を徴することなく、入札の手続を経ないで随意契約の方法により、津山市の有限会社三谷商店(以下「三谷商店」という。)に対し、給食センター修繕工事を工事費見積一四万一三〇〇円(工場扇取付工事ウォールタイプSF五〇G-V一台四万八一〇〇円、同工事ロータリータイプSF四五GR-V一台六万五二〇〇円、取付工事費、台車一台溶接工事、ルーフファン三台清掃工事一式二万八〇〇〇円、消費税を含まず。)に対して請負代金一二万二一九九円(右見積金額から二万二六六〇円値引し、三パーセントの割合による消費税相当額三五五九円を加えたもの。)で発注し、三谷商店は、平成七年五月三〇日、加茂町に対し、右工事請負代金を請求し、加茂町は、同日、右請負代金について給食センターの修繕料として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年六月一九日、右請求にかかる代金の支出を決議し、同月二二日、三谷商店に対し、右代金を支払った。
加茂町が、入札の手続を経ることなく、三谷商店に対して右修繕工事を依頼したのは、給食センターの厨房用品等の納入業者に修繕も依頼した方が緊急時等にも柔軟に対応してくれることを期待できるからであった。
7 別紙一記載番号3―6について
加茂町は、随意契約の方法で、岡山市の内海プラント株式会社(以下「内海プラント」という。)に対し、不燃物処理施設修繕工事を発注し、内海プラントは、平成七年七月二五日、加茂町に対し、右工事代金二二万七六三〇円(磁選機ベルト取替・ベルト一組七万五〇〇〇円、耐油ゴム板一組三万円、現場エンドレス一式五万五〇〇〇円、共通仮設費一式二万五三九三円、現場管理費一式一万四九四一円、一般管理費二万〇六六六円、三パーセントの割合による消費税相当額六六三〇円)を請求し、加茂町は、同日、右請負代金について不燃物処理施設修繕料として支出の発議をし、当時助役が欠員だったので町長である被告aの決裁を経て、同年八月一一日、右請求にかかる代金の支出の決議をし、同月三日、内海プラントに対し、右代金を支払った。
加茂町が、随意契約の方法で右修繕工事を内海プラントに依頼したのは、不燃物処理施設の修繕業者は岡山県内にも二、三社しかなく、コンベアの関係では内海プラントがこれを得意としており、内海プラントは緊急の場合でも対応できる業者であると思われたからであった。
8 別紙一記載番号5―1について
加茂町は、加茂町の有限会社森安商店(以下「森安商店」という。)に対し、平成七年六月二四日、同月二七日及び同年七月三日、書籍一四セット及び六冊を定価の代金合計一七万二八三九円で発注し、森安商店は、同年七月三日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について小学校の教育振興備品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月一二日、右請求にかかる代金の支出の決議をし、森安商店は、同月二〇日、加茂町から右代金を領収した。
加茂町は、図書が再販商品であることから、書籍を購入する場合は、通常、定価で購入している。
9 別紙一記載番号5―2について
加茂町は、平成七年五月二五日、津山市の江原誠意堂ことh(以下「江原誠意堂」という。)に対し、国語辞典(定価二二五〇円)及び漢和辞典(定価二四五〇円)合計八〇冊を定価の代金合計一八万八〇〇〇円で発注し、江原誠意堂は、同日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について中学校の教育振興備品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年六月二日、右請求にかかる代金の支出の決議をし、同月五日、江原誠意堂に対し、右代金を支払った。
10 別紙一記載番号5―3について
加茂町は、相見積をとることなく、岡山市の株式会社大久保体器(以下「大久保体器」という。)に対し、バドミントン支柱(品番OTP―一三二〇、一対(一組)あたりの定価三万三〇〇〇円)六組を代金一五万四五〇〇円(一対あたりの単価二万五〇〇〇円、三パーセントの割合による消費税相当額四五〇〇円)で発注し、大久保体器は、平成七年七月三日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について加茂中学校の教育振興備品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月六日、右請求にかかる支出の決議をし、同月一八日、大久保体器に対し、右代金を支払った。
加茂町が、右バドミントン支柱を大久保体器から購入したのは、平成六年に体育館の大規模改造を行った際、バドミントン支柱受け金具の設置を大久保体器が行っていて、同金具の規格に合致する支柱を購入する必要があったほか、大久保体器は加茂町内の小中学校と取引があるからで、右価格で購入したのは、定価よりも安くなっている右の購入価格が妥当な価格であると考えられたからであった。
11 別紙一記載番号5―4について
加茂町は、津山市の有限会社吉田楽器(以下「吉田楽器」という。)に対し、ヤマハクラシックギター(商品番号CG-一二OA、標準価格二万五〇〇〇円)五台を代金一〇万九四三七円(単価二万一二五〇円、三パーセントの割合による消費税相当額三一八七円)で発注し、吉田楽器は、平成七年七月五日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について中学校の教育振興備品費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月一七日、右請求にかかる支出の決議をし、加茂町は、同年八月八日、吉田楽器に対し、右代金を支払った。
加茂町が、右ギターを吉田楽器から購入したのは、加茂町内には楽器を扱う業者がいないところ、津山市内には二、三社の業者があり、ヤマハ製品を扱う業者は限られる上、その中でも吉田楽器は以前から加茂町と取引があったため、価格の交渉が比較的容易だったからであった。
12 別紙一記載番号5―5について
加茂町は、加茂町の作州電器チェーン加茂店ことi(以下「作州電器チェーン」という。)に対し、エアコン(サンヨーSAP―E二五六VS)一台を代金一五万円(消費税相当額を含む。)で発注し、作州電器チェーンは、平成七年七月三一日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について平成七年七月二四日付加教契第〇七〇四〇号に係る外国青年招致事業備品購入費として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同年八月一日、右請求にかかる支出の決議をし、作州電器チェーンは、同月二日、加茂町から右代金を領収した。
加茂町が、右エアコンを作州電器チェーンから購入したのは、右エアコンの取付を加茂町に英語指導助手として来ている外国人が滞在している民家に配管等の工事を含めて行う必要があるものであったところ、右代金は二〇万円程度の単価のエアコンに取付費及び消費税相当額も含めて一五万円であったため、他の業者よりも安いと判断したからであった。
他方、加茂町において、保育施設にエアコンを取り付けた際、業者の見積が二九万四〇〇〇円であったのに対し、入札実施により一六万三〇〇〇円で取り付けることができたため、補助金を岡山県に返納するために、加茂町保健福祉課において補正予算を組んだことがあった。
13 別紙一記載番号5―6について
加茂町は、美創に対し、加茂町駅駐輪場看板工事を代金一四万六二六〇円(看板本体一式一〇万五〇〇〇円、文字・ピクトグラス加工費三万一〇〇〇円、取付工賃六〇〇〇円、三パーセントの割合による消費税相当額四二六〇円)で発注し、美創は、平成七年七月二〇日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について加茂町駅前駐輪場看板代金として支出の発議をし、当時助役が欠員であったため町長である被告aの決裁を経て、同年八月九日、右請求にかかる支出の決議をし、美創は、同月一〇日、加茂町から右代金を領収した。
14 別紙一記載番号6―1について
加茂町は、平成七年七月二六日、森安商店に対し、油抜取り作業等を代金一二万六六九〇円(三パーセントの割合による消費税相当額三六九〇円を含む。)で発注し、森安商店は、同日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について加茂町学校大規模改装工事にかかる手数料として支出の発議をし、被告bの決裁を経て、同月三一日、右請求にかかる支出の発議をし、森安商店は、同年八月一一日、加茂町から右代金を領収した。
加茂町が右作業を森安商店に依頼したのは、右作業は、加茂小学校の冷暖房施設に使用していた重油を重油タンクから抜き取る作業等を含んでいたところ、当時、重油を納入していたのは森安商店で、加茂町内で唯一重油を扱っている業者だったからであった。
15 別紙一記載番号7―1について
加茂町は、加茂町の加茂観光バス有限会社(以下「加茂観光バス」という。)から、バス二台を代金一〇万円で借り上げ(運行予定日平成七年六月四日、配車時刻午前八時三〇分、帰着時刻午後五時三〇分、コース加茂町からドイツの森への往復)、加茂観光バスは、同月五日、加茂町に対し、右代金を請求し、加茂町は、同日、右代金について同和教育グループ育成事業(○○会)町外研修(六月四日))に要したバス借上料として支出の発議をし、教育委員会部局の前原社会教育課長の決裁を経て、同月九日、右請求にかかる支出の決議をし、加茂町は、同月一六日、加茂観光バスに対し、右代金を支払った。
平成六年一月五日当時、那岐観光有限会社によれば、バス借上料金は、津山市から岡山駅までの片道で大型七万円、中型五万円であり、津山市から岡山市までの往復で大型一〇万二〇〇〇円、中型七万五〇〇〇円であり、津山市からたけべの森までの往復で大型八万一〇〇〇円、中型五万五〇〇〇円であった。
16 加茂町では、一般的に、物品購入や請負契約等をする場合、予算を立てる段階では任意の一者から見積をとり、予算執行の段階では相見積をとったり、入札を実施する。物品の購入を随意契約でする場合は、カタログが入手できる場合は、カタログにより、できない場合もその他の何らかの方法により、購入しようとしている物品の定価又は相当な価格を市場調査する。消耗品の購入の際は、従前に購入した際の価格を参考にする。
17 加茂町においては、予定価格が一〇万円を超える物品の購入又は修繕をするときは書面(起案書)による決裁を要し、一件の金額が五〇万円を超える契約又は物件の取得交換及び処分(以下「契約等」という。)の場合は町長の決裁を、一〇万円を超え五〇万円以下の契約等の場合は助役(教育長)の決裁を、一〇万円以下の契約等の場合は課長の決裁をそれぞれ受けなければならい(町財務規則一六三条、町事務決裁規定四条、別紙第2、2(8)(9)、3(9)(10)。
また、随意契約による場合は、原則として二人以上の者から見積書を徴さなければならないが(町財務規則一〇九条)、(1)国、地方公共団体その他公法人又は公益法人と契約するとき、(2)法令により価格の定められている物品を購入するとき、(3)一件の予定価格が一〇万円以下の工事、製造その他の請負契約を締結するとき、又は一件の予定価格が一万円以下の物品を購入するとき、(4)見積書を徴取できない特別の理由があるとき、(5)前記(1)ないし(4)のほか、見積書を必要としないものと認められるときは見積書を省略することができる。
さらに、町長は契約の相手方を決定したときは契約書を作成しなければならず、(1)せり売りにするとき、(2)物品を売り払う場合において、買受人が代金を即納してその物品を引き取るとき、(3)予定価格が五〇万円を超えない物品を購入するとき、(4)前記(1)ないし(3)のほか、契約について特に町長が契約書を作成する必要がないと認めるときは契約書の作成を省略することができるが、その場合は必要事項を記載した請書を契約の相手方から徴さなければならず(町財務規則一一一条)、ただし、指名競争入札若しくは随意契約による場合で、契約金額が二〇万円未満の契約をするとき、又は契約の性質若しくは目的により契約担当者が請書を徴する必要がないと認めるときは請書を徴さなくてもよい。
そして、町長は、随意契約によろうとするときは、あらかじめ予定価格を定めなければならず、予定価格は契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない(町財務規則一〇八条の二、一〇〇条)。
18 起案書は、地方公共団体又はその機関の意思を決定し、あるいは事業を実施するための基盤となる文書で、一般的に、事業等の実施の際は、これにより決裁を受けなければならないこととなっており、これにより責任の所在が明らかにされる。支出負担行為の決裁は支出にかかるものであり、起案書の決裁とは別のものである。課長決裁の場合は、口頭で行われる場合もある。
二1 本件各支出の法令及び町財務規則違反の有無について(争点1)
前記一17で認定した事実及び前記第二、二の争いのない事実によれば、町財務規則では、加茂町において、予定価格が一〇万円を超える物品の購入又は修繕をするときは起案書を作成しなければならないことが認められるところ、本件各支出のうち駐輪場看板設置(別紙一記載の番号5―6)を除くすべての支出費目につき起案書が作成されなかったことにつき争いはなく、駐輪場看板設置についても、加茂町において起案書が作成されたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件各支出はすべて起案書を作成していない点において町財務規則に違反している。
次に、前記一17で認定した事実及び前記第二、二の争いのない事実によれば、町財務規則では、加茂町において随意契約により一件一万円を超える物品の購入をするとき及び一件一〇万円以上の工事、製造、その他請負契約を締結する場合は、原則として二人以上の者から見積書を徴さなければならず、本件各支出のうちノーマット外(別紙一記載の番号1―2)、ぺーパーマット(同2―2)、図書書籍(同5―1)、バドミントン支柱(同5―3)、ギター購入(同5―4)、エアコン(同5―5)については一件一万円以上の物品の購入であり(なお、被告は図書書籍(同5―1)については見積書の省略は可能である旨主張するが、図書書籍(同5―2)はすべて一冊一万円以下の価格であるのに対し、図書書籍(同5―1)は一セットが一万円を超える価格の書籍も含まれていることから、被告の主張は採用できない。)、表示看板(同1―1)、校舎体育館補強(同3―2)、遊具塗装(同3―3)、台車溶接外(同3―4)、不燃物処理施設修理(同3―6)、駐輪場看板設置(同5―6)、油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)はすべて一件一〇万円以上の工事その他の請負契約であって、本件各支出のうち右に挙げた各項目については、他の見積書を省略することができる場合に該当しないことが認められるところ、本件各支出のうちノーマット外(別紙一記載の番号1―2)、校舎体育館補強(同3―2)、駐輪場看板設置(同5―6)及び油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)を除くすべての項目の支出につき見積書が作成されなかったこと及び校舎体育館補強(同3―2)については見積書が一人の者からしか徴されていないことに争いがなく、ノーマット外(別紙一記載の番号1―2)、駐輪場看板設置(同5―6)及び油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)についても、加茂町において見積書が徴されたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、本件各支出のうち図書書籍(同5―2)及びバス借上(7―1)を除くすべての項目の支出につき、見積書の徴取に関し町財務規則に違反している。
前記一17で認定した事実及び前記第二、二の争いのない事実によれば、町財務規則では、加茂町において、予定価格が五〇万円を超えない物品の購入その他一定の場合を除き契約書を作成しなければならず、本件各支出のうち表示看板(別紙一記載の番号1―1)、校舎体育館補強(同3―2)、遊具塗装(同3―3)、台車溶接外(同3―4)、不燃物処理施設修理(同3―6)、駐輪場看板設置(同5―6)、油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)、バス借上(7―1)の支出にかかる契約はすべて右契約書を作成しなければならない場合に該当することが認められるところ、右各支出のうち不燃物処理施設修理(同3―6)、駐輪場看板設置(同5―6)以外の支出にかかる契約については契約書が作成されなかったことにつき争いがない。したがって、表示看板(同1―1)、校舎体育館補強(同3―2)、遊具塗装(同3―3)、台車溶接外(同3―4)、油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)、バス借上(7―1)の各項目の支出は契約書作成の点において町財務規則に違反している。
なお、法令違反の点については、本件各支出が正当な価格による支出として必要最小限の支出であるか否かの判断が、次の損害の有無の判断と実質的に重なるので、後記2の損害の有無と併せて判断する。
2 加茂町の損害の有無について(争点2)
表示看板(別紙一記載の番号1―1)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取において町財務規則違反があり、前記一1で認定した事実によれば、相見積書がないため本件の代金の妥当な金額は不明であるが、原告らの主張するように加茂町が実際に契約した代金額よりも低い代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はなく、むしろ、従来、看板作成につき入札を実施した場合は、本件の表示看板作成を行った業者である美創が落札することが多かったというのであるから、美創は従来より適正な代金を申し出ていたものと考えられ、本件の表示看板についても、その代金額は不当に高額ではなかったと推認され、したがって、本件の表示看板の代金が必要最小限の支出ではないとはいえないから、地方自治法二条一四項又は地方財政法四条一項に違反するものとは認められず、加茂町に損害があったと認めることもできない。
ノーマット外(同1―2)については、起案書の作成及び見積書の徴取の点で町財務規則違反があるが、前記一2で認定した事実によれば、本件のノーマットアンバックは定価八万円の八二・五パーセントである六万六〇〇〇円で購入しており、定価よりは一七・五パーセント割引された金額での購入であって不当に高額であるとはいえないし、原告らの主張するように見積書を徴取していれば、加茂町が購入した価格よりもより低い価格すなわち一七・五パーセントを超える割引率で購入することができたと認めるに足る証拠はないから、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令違反であるとはいえないし、加茂町に損害が生じたと認めることもできない。
ペーパーマット(同2―2)については、起案書の作成及び見積書の徴収の点で町財務規則違反があるが、前記一3で認定した事実によれば、本件において購入したインク等の物品はメーカーの純正の消耗品であり、販売業者からデュープリンター三三〇〇自体が学校、役所等以外の民間企業等ではあまり使用されていないことから、メーカーが値引きをしないと告げられたことが認められ、右のような事情に照らせば、原告らの主張するように見積書を徴取していたとしても、加茂町が定価よりも低い価格で右物品を購入することは困難であったと推認され、加茂町が定価よりも低い価格でこれを購入することができたと認められないから、右購入による支出が必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令違反であるとはいえないし、加茂町が損害を被ったと認めることもできない。
校舎体育館補強(同3―2)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取の点で町財務規則違反があり、しかも、前記一4で認定した事実によれば、施工前、施工状況、施工後の写真等も提出されておらず、かつ検査復命書もないため、本件の工事の内容及び工事代金の妥当な金額が不明であり、決して適正な手続を経た支出とはいえないが、他方で、原告の主張するように複数の者から見積書を徴取していたとしても、加茂町が実際に契約した工事代金額よりも低い工事代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はなく、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえないから前記法令違反であるとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることもできない。
遊具塗装(同3―3)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取の点で町財務規則違反があり、加えて、前記一5で認定した事実によれば、具体的な塗装箇所、塗装内容及び請求金額の明細については現場において口頭で確認が行われただけで、作業内容別の内訳の記載のある工事費内訳書(乙一六の三)も口頭での確認後に事後的に加茂町の職員が記載したものであり、当初から予定されていた本件の工事の具体的内容及び工事代金の妥当な金額は不明であることから、決して適正な手続を経た支出とはいえないが、他方で、原告の主張するように複数の者から見積書を徴取していたとしても、加茂町が実際に契約した工事代金額よりも低い工事代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はなく、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえないから前記法令違反であるとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることもできない。
この点、原告らは、右の遊具塗装工事とほぼ同時期に同じ業者が行った小学校遊具塗装工事と比較して工事比率の高低を問題にするが、前記のとおり、本件で問題となっている塗装工事の具体的な塗装箇所、塗装内容及び請求金額の明細については不明であることから、原告らが主張するような単純な比較が可能であるとは必ずしもいえず、また、原告cの本人尋問における供述によれば、工事比率の下限は通常六六パーセントとされ、右のとおり原告らが比較の対象とする小学校遊具塗装工事の工事比率は五四・五パーセントであるから、右工事比率は低きに失するのであって、これを比較の対象として本件の遊具塗装工事の工事比率の高低を論ずること自体相当ではなく、結局、原告らの主張を採用することはできない。
台車溶接外(同3―4)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取の点で町財務規則違反があり、前記一6で認定した事実によれば、相見積書がないためファンの適正価格及び工事代金の妥当な金額は必ずしも明らかではないが、ファンの代金については一応見積書による価格の二割にあたる二万二六五〇円の値引きがされており、他方で、原告の主張するように複数の者から見積書を徴取していたとしても、加茂町が実際に契約した代金額よりも低い代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠がないことから、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえないから前記法令違反であるとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることもできない。
不燃物処理施設修理(同3―6)については、起案書の作成及び見積書の徴取の点で町財務規則違反があるが、前記一7で認定した事実によれば、不燃物処理施設の修繕業者は岡山県内にも二、三社しかなく、コンベアの関係では内海プラントがこれを得意としていて、内海プラントであれば緊急の場合でも適切に対応をしてもらえることが期待できることから、加茂町は本件の修繕工事を随意契約の方法で内海プラントに依頼したのであり、右の事情に鑑みれば、そもそも複数の者から見積書を徴収することが必ずしも可能であったとはいえないし、仮にそれが可能であったとして、複数の者から見積書を徴取していたとしても、加茂町が実際に契約した工事代金額よりも低い代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はないのであって、必要最小限の支出ではないとはいえないから前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることもできない。
図書書籍(同5―1)については起案書の作成及び見積書の徴取の点で、図書書籍(同5―2)については起案書の作成の点でそれぞれ町財務規則違反があるが、加茂町が本件の各書籍を定価で購入していたとしても、原告らの主張するように、複数の者から見積書を徴取したり入札を行っていれば加茂町の購入価格の九七パーセントの価格で購入することができたと認めるに足る証拠はなく、かえって、書籍については、再販価格維持がなされていることが多いことは公知の事実であることからすれば、右図書書籍の購入が必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえないから前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害が生じたと認めることもできず、原告らの主張は採用できない。
バドミントン支柱(同5―3)については、起案書の作成及び見積書の徴取の点で町財務規則違反があるが、前記一10で認定した事実によれば、加茂町は、本件のバドミントン支柱を定価三万三〇〇〇円の七六パーセントである二万五〇〇〇円で購入しており、定価よりは二四パーセント割引された金額での購入であって不当に高額であるとはいえないし、原告らの主張するように見積書を徴取していれば、加茂町が購入した価格よりもより低い価格すなわち二四パーセントを超える割引率で購入することができたと認めるに足る証拠はないから、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町が損害を被ったと認めることもできない。
ギター購入(同5―4)については、起案書の作成及び見積書の徴取の点で町財務規則違反があるが、前記一11で認定した事実によれば、本件のギターは定価二万五〇〇〇円の八五パーセントである二万一七五〇円で購入しており、定価よりは一五パーセント割引された金額での購入であって不当に高額であるとはいえないし、原告らの主張するように見積書を徴取していれば、加茂町が購入した価格よりもより低い価格すなわち一五パーセントを超える割引率で購入することができたと認めるに足る証拠はないから、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害が生じたと認めることもできない。
エアコン(同5―5)については、起案書の作成及び見積書の徴取の点で町財務規則違反があるが、前記一12で認定したとおり、加茂町は、当時約二〇万円のエアコンを取付費及び消費税相当額を含めて一五万円で購入したもので、不当に高額であるとはいえないし、原告らの主張するように見積書を徴収していれば、加茂町が購入した価格よりも低い価格で購入できたと認めるに足る証拠はないから、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることもできない。
駐輪場看板設置(同5―6)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取において町財務規則違反があり、前記一1及び13で認定した事実によれば、相見積書がないため本件の工事代金の妥当な金額は不明であるが、従来、入札を実施した場合は本件の工事行った業者である美創が落札することが多かったというのであるから、本件の工事においても、工事代金は不当に高額ではなかったと推認されるし、原告らの主張するように加茂町が実際に契約した工事代金額よりも低い代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はないことからも、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることはできない。
油抜取り・マンホール取り外し(同6―1)については、起案書及び契約書の作成並びに見積書の徴取において町財務規則違反があり、前記一14で認定した事実によれば、相見積書がないため本件の代金の妥当な金額は明らかではないが、加茂町が実際に契約した代金よりも低い代金で発注することができたことを認めるに足りる証拠はなく、必ずしも必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害があったと認めることはできない。
バス借上(同7―1)については、起案書及び契約書の作成の点において町財務規則違反があるが、本件のバス借上料金は、借りた二台のバスが大型か中型かは不明であるが、加茂町から岡山県赤磐郡β所在の岡山農業公園ドイツの森までの往復で一台あたり五万円の二台で合計一〇万円であり、前記に認定した津山市から岡山駅、岡山市、岡山県御津郡γ所在のたけべの森までの借上料金と比較すれば、特に不当に高額であるということはできないから必要最小限の支出ではないとはいえず、したがって、前記法令に違反しているとはいえないし、加茂町に損害が生じたということはできない。原告らは、八万一〇〇〇円が妥当な金額である旨主張するが、バスの台数が二台であることからすれば、前記認定の借上料金に照らし、原告の主張に根拠があるとはいえず、採用できない。
原告らは、本件各支出のうち、請負契約の場合は入札により通常の代金額の八〇パーセント、物品の購入の場合は定価の六六パーセントで契約することが可能であった旨主張し、原告d及び同cはその各本人尋問において右主張に沿う供述をするが、これらはいずれも何ら具体的かつ合理的な裏付けを伴うものではなく、単に一つの推測を述べるにすぎないから、採用の限りではない。
三 以上のとおり、本件各支出は、いずれも町財務規則に反する手続でなされたものではあるが、法令に反し、本件各支出により加茂町に損害が生じたということはできない。しかし、右のような町財務規則違反がひいては加茂町に損害を発生させるような法令違反となる危険性は十分あるから、右のような町財務規則に反する行為を改め、右規則に沿った運用をすることが重要な課題であることはいうまでもない。
よって、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法三七条、民事訴訟法六一条、六五条一項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野木等 裁判官 村田斉志 裁判官 村上誠子)